大杉谷の魅力は何処にあるのだろうか。
写真は1990年頃に撮影したものであるが、あえてモノクロームフ
ィルムを使用したものだ(三度目の探勝での撮影)。その方が、
私の意図を表すことが出来ると考えたからである。
男の嗜好は、最後には石(陶磁器)に落ち着くらしい。青年には
何が必要かは言うまでもない。美しい物は誰が見ても美しく思え
る。年齢を重ねるとともに有機質の物から無機質な物に興味が湧
いた。大杉谷探勝は単純に石を愛でる旅だったのかも知れない。
そのために水量の少ない季節を選んだのである。
岩から岩に飛び移り、気に入った岩があれば撮影し、疲れたなら、
岸辺の岩に腰を下ろしてエメラルド色に光る流れ眺めては仕事で
疲れた心を癒した。
大杉谷へのアプローチと好きな所
大杉谷探勝は、奈良県側の大台ケ原山から下る道と、三重県側の宮川沿い
に登る道の二つの方法がある。アプローチが長いので二泊の行程で予定を
組みたい。谷沿いの山小屋は堂倉に一カ所、桃ノ木に一カ所あり、避難小
屋も充実している。
七つ釜の滝、千尋の滝、ニコニコ滝と名瀑はいくつもあるが、私の好きな
ところは、ニコニコ滝のあるシシ淵である。四季を通して美しいところだ。
時間が許すなら、せめて二時間はこの場所で過ごしてみたい。今回の写真
はシシ淵で撮影したものだが、水量が少なかったせいか、谷の向こうにニ
コニコ滝が写っていない。