chikusai diary

昭和という時代に どこででも見ることができた風景を投稿しています。

昭和の記憶 苦界浄土(空と海の間)

 

 

 

人間死ねばまた人間に生まれてくっとじゃろうか。

うちゃやっぱり、ほかのもんに生まれ替わらず、

人間に生まれ替わってきたがよか。

うちゃもういっぺん、じいちゃんと舟で海にゆこ

うごたる。

 

石牟礼道子著『苦界浄土』ゆき女 きき書きより

 

 

 

上の写真は四十数年前に有明海で撮影したものです。夜明け前に海岸に行き、
手ぶれを気にしながら撮影した覚えがあります。増感現像でどうにか見られ
るような仕上がりにはなりましたが、銀粒子の荒れにはまいりました。

当時、石牟礼道子さんの名は知ってはいたように思いますが、著作を読んで
はいませんでした。むしろ敬愛するユージン・スミス氏を追いかけ、水俣
撮影した写真展を見に行ったり、氏の情報を集めていました。

不思議なもので、ある日仕事の帰り道にユージン・スミス氏の夫人とすれ違っているのです。
人違いかと思いましたが、まさしくご本人でした。お顔を拝見するのは十代のとき以来ですが、
覚えているものですね。

 

苦界浄土』を読むことは、長いこと、ためらいがありました。写真には抵
抗が無いのに、文章にふれるのには、何故か抵抗があったのです。もう少し
早く読むべきだったと思いました。