いつかは数寄屋風の家に住んでみたい、と夢を見た。
仕事柄、国宝や重要文化財である建物に出入りすることがあった。
書院造り、寝殿造りの魅力とそこでの生活の大変さも、人よりは
肌で感じている。夏は良いとしても、厳冬期には炭櫃だけでは体
は暖まらないだろう。戸を閉め切っても隙間風は入るし、当時の
贅沢な生活(庶民と比べ)をしていた貴族の方々はどれだけ寒さ
に強かったのだろう。『枕草子』にも寒さに打ちひしがれた様子
は見えない(真冬の宿直は辛かろうに)。
数寄屋での一期一会
書院造り・寝殿造りの屋根には、日本古来の茅葺屋根に通じるものがある。
伊勢神宮の簡素な屋根の面と棟のラインの美しさ、そして白木を用いた掘
っ立て小屋風の造作には眩しくて言葉も出ない。
茅葺屋根の家に再び住んでみたいと思っている。それは今の時代では、と
ても贅沢なことに違いない。裕福な人が、庭のあちこちに選りすぐりの部
材を用いた何軒もの数寄屋風の“茶室”を建て、“ワビサビ” を論じ、名物の
茶碗で茶を喫し、贅沢な時間を客と共に過ごすおもてなしをする。それが
一期一会というものなのだろう。
新緑の頃の庭もまた美しい。
・撮影年:1990年頃
・カメラ:Nikon New FM2
・レンズ:28mm 35mm(たぶん)
・カラー写真のカメラ:New Mamiy6
・同上のレンズ:50mm 75mm