京都市北部、いわゆる北山と呼ばれる地域に鬱蒼としたアシウスギの
巨樹群があるとは、京都市民にとっても俄かには信じ難いことかもし
れない。だいぶ以前のこと、クリスマスの日に出町柳から京都バスに
乗り出かけてみた。
アシウスギ(ウラスギ)とは京都の庭園でよく見かける「伏条台杉」
の親分のようなもので、地上から少し上のところで幹を切断するとそ
の位置から再び「ひこばえ」状の芽が出て、複数の若い幹を観賞する
ことができるのだとか。元は北山で林業に従事する杣人がその方法を
編み出し、手頃な太さの杉を取っていたのだろう。
「片波川源流域伏条台杉群生地」は観察路が整備され、主要な巨木には名が付けられている。
アシウスギの巨樹を求めて北山を探索すること二年、思いもしない近い
ところに探し求めていた巨樹群があった。なんでも幹回りの太さは屋久
島の縄文杉にも劣らないとか(ちょっとオーバー)。
北山のアシウスギ(ウラスギ)の特徴は「伏条台杉」にあると言い、雪
の重みで木の枝が垂れ下がって地面に着き、そこから根付き芽が出て再
び若木が成長するのだとか(以前に立山にもアシウスギの巨樹があるこ
とをTVを見て知った)。
午後の遅い時間だったので、後光(西日)が射しているように見える。
上の写真右側の木に伏条台杉の特徴が出ている(若い幹が真っすぐに上に伸びている)。
山の斜面にへばりつくように根を下ろしている(長年の積雪で根元が曲っている)。
原木を麓まで降ろす労を少なくするため、杉の木の太い部分を切取り、
里まで背負って運んだのだろう。杢目の良いものは机の鏡板として高
額で売れたのだろう。このような木を “板取の木” と呼んでいるようだ。
北山では三本ほど見かけた。
京都バスの起点である叡電出町柳駅からバスに乗り、一時間ほどで大布施
に到着する。ここから歩いて通常なら二時間ほどで「片波川源流域伏条台
杉群生地」に着く。
暮れも押し迫った休日、たまたま雪が降ったので片波山に出かけてみた。
夏には訪れていたものの、是非とも積雪期に再訪してみたいと思っていた。
積雪も二三十センチほどで歩くのに支障はない。最終バスの時間を気にし
ながら写真撮影する。帰りには朧月夜で趣はあったのだが、とぼとぼと一
人寂しく夜道を歩いた覚えがある。
※片波川源流域伏条台杉群生地へ行くには、叡電出町柳駅から京都バス
でいく方法(日帰り可)と自動車でいく方法(京都駅から約二時間)が
ある。自動車で行く方法は、林道は狭く駐車スペースも限られているの
であまりお奨めできない。
以前は観察会ツアーもあったようだが、最近は聞かないので積極的に世
間に知らせてはいないようだ。熊は勿論のこと、山ヒル(足元から這い
上がって血を吸います)の生息地なので、それなりの用意と覚悟が必要。
撮影年:1990年頃