寝る前1分の「エセ―」
ただこのことだけを言っておく。哲学者ピュロンはある大嵐の日に船に乗っていたが、
自分のまわりでひどく恐れおののいている人たちに向って、その嵐にまったく平気で
いる豚を示して彼らを元気づけた。
それならわれわれはあえてこう言ってもよいのか。すなわち、「われわれがあんなに
も鼻にかけ、また、それがあるために自らを万物の霊長と考えているあの理性という
特権はわれわれを苦しめるために与えられたのか。
事物についての知識などというものは、はじめからなければのんきにしていられるの
に、それがあるために安息と平静を失うものだとすれば、そしてわれわれが豚よりも
劣った状態におかれるのだとすれば、何の役に立つというのか。
われわれの至福のために与えられた知性をわれわれは破滅のために用いるのか。われ
われ各人にその道具と手段とを自らの幸福のために用いよと命ずる自然の意図と事物
の普遍的な秩序に逆らうのか」と。