寝る前1分の「エセ―」
私は最近、いくらもない余生を平穏と隠遁のうちに送ることにして、
できるだけ他のことに心を煩わすまいと決心して自分の家に退いた
が、私の精神を完全な無為のうちに過ごさせ、自分のことだけを考
えさせ、自分の中に安住させること以上に、これを大切にする方法
はないと思うようになった。
これは、今後私の精神が年とともに重みを加え、円熟を増すように
なれば、ずっと容易にできるだろうと期待していたことである。し
かし、私は、
無為は常にさ迷う精神を生む、
とあるように、精神は逆に放れ駒と同じく、自分のこととなると他
人のために動くときよりも百倍も多く心を煩わすことを知っている。
また、私には妄想や空想の怪物があまりにもたくさんに、次から次
と生れて来るものだから、私は、これらの愚にもつかぬ奇妙さを、
あとでゆっくり眺めようと思って記録することをはじめた。
時が経てば私の精神がそのことで自分自身を恥かしく思うだろうと
期待しながら。