寝る前1分の「エセ―」
悲しみのために石と化した。
われわれの力を越えるいろいろな出来事に圧倒されたときに
呆然として声も出せず、耳も聞こえなくなるあの沈鬱な痴呆
状態を表現しようとしたのである。
実際、悲しみの力が極まると魂全体を驚愕させ、その自由な
働きを妨げる。たとえば、われわれはひどく悪い知らせには
はっと驚くと、何かに押さえつけられ、身内が凍って、全身
が動かなくなったように感じるが、そのあとで悲嘆の涙にく
れて心がゆるんでくると、はじめて束縛から解き放されて、
自由な楽な気分になることがある。
※モンテーニュ『エセ―』より。写真と本文は関係がありません。